天然トラフグの取扱量で日本一を誇る下関
下関ではフグのことを”フグ”ではなく幸福の「福」とかけて”フク”と呼びます。一説には”フグ”は不遇を意味するため嫌がられ、フクになったとも言われます。
でもわかりにくいのでここではあえてフグと言わせてもらいますね。
そんなフグで有名な下関ですが、下関には南風泊市場というフグ専門の卸売市場があります。
フグ専門なのでフグの取引しかありません。
筒状の袋の中で仲買人が競り人の指を握って買値を示す「袋競り」という競り方法が特徴で、これは全国でも類を見ない、南風泊市場ならではのものだそうです。
■袋競りの方法
袋競りは、黒い筒状の袋の中で、競り人(売り手)の指を仲買人(買い手)が何本握るかによって価格が決まるという非常に独特な競り方です。
この競り方法を採用しているのは、フグ専門の市場である南風泊市場だけだそうです。
袋競りの始まりを知らせるベルが鳴ると、黒い筒状の袋に手を入れた競り人が「ええが!ええが!」と掛け声をかけ、仲買人は袋の中で競り人の指を握って買値を伝えていきます。
まず仲買人が競り人の人差し指1本を握ると「1」、人差し指と中指の2本で「2」、人差し指と中指、薬指の3本で「3」、人差し指と中指、薬指と小指で「4」、4本の指に親指を加えて「5」と表します。「6」以上は、最初に指を1本握って、それから指を何本引くかによって示されます。
買値の基準になる単位はその時点の相場に応じて定められ、その単位に、握った指で示された数字をかけたものが買値希望額となります。
話だけだと簡単そうに思えますが、袋競りでは競り人と仲買人による高度な駆け引きが必要とされます。
競りのスピードも非常に早く、トラフグが複数入ったトロ箱1つが、わずか数十秒でどんどん競り落とされていくので、仲買人はふぐの値打ちを素早く見極めていかなければなりませんから、袋競りに参加すること自体、かなりの経験が必要とされるのです。
■袋競りはいつからはじまった?
フグは高級魚ですから、昔は競りで喧嘩になることも少なくなかったそうです。
そこで、値段の駆け引きが周囲に見えないようにしようという発想になり「袋競り」が生まれたというわけです。
また、昔はカッパ(雨具)の袖口に手を入れて競りをしていたそうですが、時代の流れとともにカッパを着用しなくなったので、今の黒い袋を使うようになったそうです。
■袋競りが見れるのは年に2回
1つはフグのシーズンとなる毎年9月の初競り、もう1つは毎年1月、年明け最初に行われる新春の初競り。
独特の競り方なので、ニュースや新聞などメディアにも取り上げられることが多く、それを見て下関までフグ料理を食べにくることも多いそうなので、下関の活性化に貢献している重要な文化の1つと言えます
尚、競りに参加できるのは下関唐戸魚市場仲卸協同組合の組合員のみで、2019年現在、組合に参加している28の業者のみ。
南風泊市場に水揚げされ、この組合員が取り扱うフグには本物の証として「下関ふく」のシールが貼られます。
「下関ふく」のシールは仲卸人のこだわりと自信の証と言えます。